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NEXIについて

OECDにおける社会問題への取組み (環境・贈賄・持続可能な貸付)

OECD輸出信用・信用保証部会では、公的輸出信用の供与に際しての金融条件のみならず、環境社会配慮、贈賄の防止や持続可能な貸付の促進といった社会問題への取組みについても議論されています。NEXIはこのような議論に積極的に参加するとともに、OECDで定められたルールに従い、以下のような取組みを実施しています。

公的輸出信用と環境社会配慮

1.OECD環境コモンアプローチ

2001年11月、OECD輸出信用・信用保証部会において、「公的輸出信用及び環境に関する共通アプローチ(OECD環境コモンアプローチ)」が合意されました。その後、数度の見直しが行われて、その内容が強化されています。OECD環境コモンアプローチは、償還期間2年以上のプロジェクトに対する公的輸出信用の供与に際しての環境社会配慮確認の実施を求めています。

2.NEXIの取組み

NEXIでは、環境社会配慮のためのガイドラインを定めており、その内容はOECD環境コモンアプローチを踏まえたものとなっています。同ガイドラインに基づき、貿易保険の付保に際して環境社会配慮確認を実施しています。

公的輸出信用と贈賄防止

1.贈賄防止への取組み

国際商取引における公正な競争の確保を目的として1999年2月に発効した「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約(OECD外国公務員贈賄防止条約)」では、不当な利益の取得のために外国公務員に対して金銭等の不当な利益を供与することを禁じています。

この条約を受けて、我が国でも不正競争防止法を改正(1999年2月施行)して外国公務員への贈賄に対する刑事罰を設けることとし、外国公務員等に対する不正な利益の供与等に関しては、違反者には3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(現在は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金)、法人重科として3億円以下の罰金が科されることになりました。

公的輸出信用分野でも贈賄防止に対する取組みが進められ、2000年12月にOECD輸出信用・信用保証部会において「公的輸出信用と贈賄に関する行動声明」が合意されました。そして2006年12月には、内容を一部強化した上で、OECD理事会にて「公的輸出信用と贈賄に関する勧告(OECD贈賄勧告)」が採択されました。この勧告では償還期間に関わらずに公的輸出信用の供与を対象としています。

さらに、その後のビジネス慣行の変化とこれに伴う贈賄リスクの高まりを背景に、2019年3月に、OECD贈賄勧告が改訂されました。当該改訂では、申込対象取引について、外国公務員に対する贈賄関与に加え、新たに国内公務員に対する贈賄や民間間贈賄(自国の法体系で禁止されている場合)への関与がある場合も公的輸出信用供与禁止の対象となり、また申込対象取引以外の取引について、自国以外で贈賄違反の罪で起訴・有罪等となった場合も厳格なデューデリジェンスの対象となるなど、一層の内容の強化が図られました。

2.NEXIの取組み

NEXIでは、OECD贈賄勧告の規定に従い、贈賄防止の取組みを実施しています。OECD贈賄勧告は公的輸出信用の供与を対象とするものですが、NEXIでは海外投資保険、海外事業資金貸付保険、スワップ取引保険、前払購入保険及び信用状確認保険についても同様の取組みを実施しています。

(1)誓約及び申告書の受領

保険のお申込みに際して、「贈賄防止に係る誓約及び申告書」の提出をもって、以下の内容を誓約及び申告いただいています。

注)誓約・申告内容が保険申込書に記載されている保険種もあります。

① 申込対象取引についての贈賄防止等の誓約

  • 保険申込企業等(※)が、申込みの対象となる取引に関して、不正競争防止法及び刑法に違反する贈賄行為に関与していないこと及び今後も関与しないこと
    (※)保険申込企業(被保険者となる企業や代金貸付保険における輸出者・仲介貿易者・技術提供者を含みます。)及び当該企業の役員、従業員、申込対象取引に係る保険申込企業の代理人等を指します。
  • 保険申込企業等が、世界銀行等の国際金融機関が公表する排除リスト(※)に載っていないこと
    (※)アフリカ開発銀行、アジア開発銀行、欧州復興開発銀行、米州開発銀行及び世界銀行グループが公表している排除リスト(debarment lists)をいいます。
  • 保険申込企業等が、申込対象取引に係る代理人に対して支払う報酬は合法的なサービスの対価に限定していること及び今後も限定すること

② 申込対象取引以外の取引についての贈賄関与に関する申告

  • 保険申込企業等が、現在、贈賄を禁止する法令(※外国法令を含む)に違反した罪により、いずれかの国において起訴され、又は正式捜査を受けている
  • 保険申込企業等が、過去5年間に、贈賄を禁止する法令(※外国法令を含む)に違反した罪により、いずれかの国において有罪判決若しくはこれと同等の措置(司法取引による起訴猶予や行政処分を含むがこれに限らない。)を受けたことがあるか又は仲裁裁定(公表されているものに限る。)において贈賄に関与したものと認定されたことがある
    (※)あらゆる国の法令に違反する贈賄行為が対象となり、当該国における国内公務員贈賄や民間間贈賄も含まれます。

注)上記②の申告事項に該当する事由がある場合は、web申込みの利用が制限されることがあります。

(2)代理人に関する情報の取得

保険申込みの対象となる取引に関連して代理を果たした者の素性、及びそれらの者に支払った手数料等の金額と目的について、NEXIが必要と判断する場合には、これらの情報の開示を保険申込企業等にお願いしています

(3)厳格なデューデリジェンスの実施

保険申込企業等が、贈賄を禁止する法令の規定(外国の法令を含みます。)に違反した罪により起訴等され、又は過去5年間に有罪判決等を受けた場合、通常よりも厳格なデューデリジェンス(OECD贈賄勧告で定めるEnhanced Due Diligenceを指します。)を実施し、適切な内部の是正措置や予防措置がとられていること、その措置が維持されていること、文書によるルール化が行われていること等を確認します。厳格なデューデリジェンスにより、再発予防策が適切にとられているなど保険の引受に問題ないとNEXIが判断するまで、保険のお申込みはできません。

(4)贈賄に関与したことが判明した場合の取扱い

保険契約の対象となる取引において、贈賄に関与している疑いが判明した場合は、以下の対応を行ないます。この場合、OECD贈賄勧告に基づき、必要に応じ捜査当局へ通知をすることがあります。

〈保険契約締結前に判明した場合〉

保険契約の締結を保留し、その上で贈賄に関与しているとの結論に至ったときは、保険の引受を謝絶するなどの適切な措置をとります。また、厳格なデューデリジェンスを実施し保険の引受に問題がないことが確認できるまで、新たな保険のお申込みは受けません。

〈保険契約締結後に判明した場合〉

贈賄に関与しているとの結論に至ったときは、保険金支払いについて免責となります。支払済み保険金があるときは返還いただきます。その他、保険契約の解除などの適切な措置をとります。

なお、保険契約締結後、保険申込企業等が、保険契約の対象となる取引に関して不正競争防止法又は刑法の贈賄に関する規定に違反した罪により起訴された場合、NEXIへ報告いただきます。当該報告を行わない場合、約款に定める義務違反として、保険契約が解除されます。

持続可能な貸付への取組み

1.持続可能な貸付勧告

2018年5月、OECD閣僚理事会において、「公的輸出信用と持続可能な貸付に関する勧告 “Recommendation of the Council on Sustainable Lending Practices and Officially Supported Export Credits”(以下、「勧告」という。)」が採択されました。

これはOECD輸出信用アレンジメント輸出信用部会(ECG)において2008年1月に合意された「低所得国向け公的輸出信用の供与に係る持続可能な貸付を促進するための原則・ガイドライン”Principles and Guidelines to promote Sustainable Lending Practices in the provision of Official Export Credits to Lower Income Countries”」(その後2016年11月に改訂)が勧告化されたものです。

本勧告は、低所得国が抱える債務を持続可能な水準に維持し、貸付が低所得国の経済社会発展の促進に繋がるよう、低所得国が国際通貨基金(IMF)、世界銀行(世銀)によって課されているプログラムを遵守することについて公的輸出信用機関も責任を持つためのものであり、低所得国の公的セクター向け返済期間1年以上の公的輸出信用が対象です。

持続可能な貸付勧告の原文(PDFファイル 233KB

2.NEXIの取組

NEXIは勧告に従って、低所得国に対する貸付が持続可能なものとなるように、勧告対象の保険種及び取引に関し、以下の通り引受基準の設定や保険のご相談の際の手続を行っています。詳細につきましては、営業担当者にお問い合わせください。

(1)勧告の対象となる保険種と取引

    ① 対象保険種:
  • ・貿易一般保険、輸出手形保険、貿易代金貸付保険
  • ② 対象案件:
  • ・起算点から決済期限又は償還期限までの期間が1年以上である低所得国(※1)における公的セクター向け案件(※2)
    (※1)IMFの貧困削減・成長トラスト(PRGT)の適格国又は世銀グループである国際開発協会(IDA)の無利子融資・贈与のみの適格国(IDA-only国)。低所得国のリスト(Table of countries)はOECDのHPで確認いただけます。
    (※2)G格バイヤーが支払人(借入人)又は保証人となる案件。

(2)勧告内容を踏まえた対応

  • ・勧告対象となる「低所得国の公的セクター向けに返済期間が1年以上の公的輸出信用供与案件」については、以下に沿った対応を行います。
    ① カントリーレビュー:
  • ・IMF-世界銀行共同の債務持続可能性枠組み(DSF)に基づいた国別の将来的な債務持続可能性分析(DSA:Debt Sustainability Analysis)の考慮及び関連プログラム等のレビュー(以下、「DSA等レビュー」という。)が求められているため、案件の引受に当たりDSA等レビューを行います。
  • ② 引受方針:
  • ・以下の(i)~(iii)のいずれにも該当しない国向け案件は、引受可能です。
  • ・IMFの債務制限ポリシー(DLP)及びIDAの非譲許的借入ポリシー(NCBP)に基づき債務上限に係る制限が課されている低所国に係る引受方針は以下のとおりです。
    1. (i) 非譲許的借入が認められていない国(ゼロリミット国):
      引受を行いません。
    2. (ii) 非譲許的借入の上限が設定されている国(ノンゼロリミット国):
      引受可能です。ただし、案件規模が5百万SDR以上(国民所得が10億ドル未満の国の場合は、1百万SDR以上)の引受については、内諾(輸出手形保険に関しては事前承認。以下、「内諾等」という。)が必要になります。
      また、案件規模が5百万SDR以上(国民所得が10億ドル未満の国の場合、1百万SDR以上)の場合、当該案件及び関連支出がDLP及びNCBPに沿っている旨の保証(assurance)を借入国の適切な政府機関(財務省や中央銀行等)からできる限り取得いただくことが必要になります。なお、支払人(借入人)又は保証人が、財務省又は中央銀行となる場合については、保証が取得されているものとみなします。
    3. (iii) 非譲許的借入の上限が設定されていない国(その他制限国):
      引受可能です。ただし、案件規模が5百万SDR以上(国民所得が10億ドル未満の国の場合は、1百万SDR以上)の引受については、内諾等が必要になります。

    (注)上記の記載にかかわらず、内諾等が必要な場合がありますので、内諾等の要否については、国別引受方針をご確認ください。

    ③ 事前通報:
  • ・債務上限に係る制限が課されている低所国向け5百万SDR以上の案件(国民所得が10億ドル以上の国の場合、1百万SDR以上の案件)については、引受決定前にIMF及び世界銀行に対してNEXIから通報する必要があります。
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