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Webマガジン e-NEXI

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第10回NEXI債権回収セミナー開催報告

2020年1月

株式会社日本貿易保険
債権業務部 回収グループ

 株式会社日本貿易保険(NEXI)は、海外債権回収に関する情報提供を目的として、一般社団法人日本貿易会(JFTC)との共催により「第10回NEXI債権回収セミナー」を開催いたしましたので、その概要をご紹介いたします。

 おかげさまで、NEXI債権回収セミナーは、2007年の第1回開催から数えて、今回が丁度10回目の節目の開催となりました。この間、NEXIが日々の回収業務を通じて大変お世話になっているサービサー業者や法律事務所等、海外取引に係る債権の回収関連業務に広範な知見をお持ちの機関の専門家の方々に、様々な観点から講義を行っていただき、参加者の皆様よりご好評をいただいてまいりました。

 今回のセミナーも、多数のご参加を賜りました。ご参加いただきました皆様には、この場をお借りしまして、改めて厚く御礼申し上げます。

1. 開催日時・場所

 日時:2019年11月13日(水)13:00~17:30
 場所:ベルサール飯田橋駅前


セミナー風景
(写真撮影:NEXI)

2. プログラム

時間 プレゼンター 講演内容
13:00~13:30 NEXI常務取締役 和田 圭司
NEXI回収グループ長 服部 義一郎
開会挨拶
貿易保険制度における回収制度
13:30~15:00 ベーカー&マッケンジー法律事務所
粕谷 宇史先生
これだけは知っておきたい!
クロスボーダー債権回収
~事例紹介を交えて~
15:00~15:15 (休 憩)
15:15~16:45 金杜律師事務所
閔 煒(ミン ウェイ)先生
中国における債権回収実務
~現地法制について~
16:45~17:30 岡部・山口法律事務所
山口 修司先生
海外取引の重要契約文言と留意点

3. 講義概要

(1) ベーカー&マッケンジー法律事務所

テーマ:「これだけは知っておきたい!クロスボーダー債権回収 ~事例紹介を交えて~」

 講演者お一人目には、ベーカーアンドマッケンジー法律事務所より粕谷宇史先生をお招きし、クロスボーダーの債権回収をテーマにご講演を頂きました。粕谷先生は、国内及びクロスボーダーの倒産、私的整理、債権回収案件において国内及び海外の債権者・債務者に対してアドバイスを提供しておられます。

 今回のセミナーでは、海外バイヤーによる不払い発生時の初動や、実務上の留意点について解説頂いたほか、法的手続を検討する際のポイントなどにつき、事例も交えてわかりやすくご説明頂きました。


ベーカー&マッケンジー法律事務所
(写真撮影:NEXI)

(2) 金杜法律事務所 (King & Wood Mallesons)

テーマ:「中国における債権回収実務 - 現地法制について-」

 講演者お二人目には、金杜法律事務所より閔煒 (ミン ウェイ)先生をお招きし、中国における債権回収実務についてご講話頂きました。閔先生は、企業法務、M&A、投資、技術誘致、労働紛争、渉外契約・争議処理等、幅広い分野に精通された中国法弁護士で、日本語も堪能でおられます。

 当地に於ける債権回収で困難を感じていらっしゃる参加者の方もいると思い、この度セミナーへの登壇を打診し、ご快諾頂きました。


金杜法律事務所 (King & Wood Mallesons)
(写真撮影:NEXI)

 講義では、中国固有の法制度や債権回収方法を、具体的な手続も踏まえ解説頂きました。中でも、法的手続のうち執行における「高額消費禁止令」と「信用喪失被執行人制度」は、参加者の方々のアンケートでも「興味深かった」とのコメントが多数寄せられ、関心の高さが伺えました。

(3) 岡部・山口法律事務所

テーマ:「海外取引の重要契約文言と留意点」

 最後は、弊社の債権回収の分野でパートナーを務めて頂いております岡部・山口法律事務所より山口修司先生をお招きし、回収局面を見据えた契約書類上で押さえておくべき重要なポイントについて解説頂きました。

 山口先生には、海外との売買契約書における準拠法、裁判管轄、仲裁条項等に関する留意点をご説明頂いたほか、実務的な論点としての送達や執行の問題、時効と中断方法、調停の有効性、ウィーン売買条約の取り扱い等、様々な留意点を解説いただきました。

 本記事の最後に山口先生より寄稿いただいておりますのでぜひご覧ください。


岡部・山口法律事務所
(写真撮影:NEXI)

4. 最後に

 終了後のアンケートでは、「債権回収における様々な交渉手段を知ることができた」、「テーマが実務に則しており勉強になった」、「書籍等ではわからない海外債権回収実務について、各分野のプロフェッショナルである専門家の講師に講義頂き参考になった」等、好評の声を多数いただきました。

 次回取り上げて欲しいテーマや国についてのご意見も多数頂きましたので、それらを踏まえ、より一層内容の濃い債権回収セミナーを開催してまいります。


寄稿 「債権回収セミナー第10回開催を振り返って」
岡部・山口法律事務所 山口 修司先生


岡部・山口法律事務所 山口 修司先生

 このたび「債権回収セミナー」におきまして、「海外取引の重要文言と留意点」というテーマで講演の機会を頂きました。当日は、200名を超える出席者で、皆さんに熱心に聞いて頂きました。

 私の講演に先立ち、第1部は、「これだけは知っておきたいクロスボーダー債権回収」というテーマで、事例を踏まえて、粕谷宇史先生が一般的債権回収についてお話になりました。第2部は、「中国における債権回収」というテーマで、ミン・ウェイ先生が中国特有の法制についてお話になり、そのユニークな法制に驚かれた方も多かったと思います。

 そして、私の講演は、契約において債権回収に直結する準拠法、裁判管轄約款及び仲裁約款に限り実務的観点から解説を致しました。

 日頃、契約を締結する際には、契約内容の交渉及び検討に重点が置かれますが、債権の回収という観点からは,準拠法をどこの法律とするのか、債権回収の方法を裁判とするのか仲裁とするのか、そしてその裁判を行う国または仲裁を行う国はどことするのかということがいかに重要かを理解してもらうという観点からお話しを進めました。

 実は、準拠法が変われば、契約内容の解釈も変わることがあります。そのため、契約内容の交渉には準拠法を頭に置いて行う必要があるのです。

 また、債務が不履行となって債権回収作業を行う場合、安易に日本の裁判所を管轄裁判所として合意しますと、問題の債務者の所在地では日本の裁判の執行ができないという問題に直面することがあるという点は見落とされがちです。

 一方、仲裁については、ニューヨーク条約によって、159カ国(2019年2月現在)において、その執行が相互に保証されています。しかし、仲裁にも落とし穴があって、仲裁合意有効性や、仲裁開始の通知の送達などを争われ、せっかくの仲裁裁定を有効に執行できないというようなことにならないような手立てを講ずる必要があります。

 今回は時間が短く詳しくお話しできませんでしたが、また次回も皆様の興味あるテーマでお話ししたいと考えています。


【 本セミナーに関するお問い合わせ窓口 】
株式会社日本貿易保険(NEXI)
債権業務部 回収グループ TEL:0120-673-094

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