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新年のご挨拶

代表取締役社長 黒田 篤郎

 新年あけましておめでとうございます。
 旧年中は格別のご厚情を賜り心より感謝を申し上げます。新しい年の始まりに際し、謹んでご挨拶を申し上げます。

 貿易保険制度創設70周年であった昨年に続き、私ども日本貿易保険(NEXI)は今年、創立20周年を迎えます。新型コロナウイルスによる未曾有の危機(コロナ禍)が続く中、公的貿易保険機関としての役割がこれまでになく求められる一年になると考えております。

 コロナ禍は世界中に深刻な影響をもたらし、世界の貿易・投資は大きな打撃を受けました。昨年上半期の世界の対外直接投資金額は前年より 49%減少し、昨年の世界の貿易量は 9.2%の減少が見込まれています。今年は徐々に経済状況が回復するという予測もありますが、企業活動にとっての事業環境、とりわけ貿易・投資環境は引き続き厳しいものになると思われます。

 このような状況下、NEXI としては、コロナ禍への対応として、次の3つの基本方針を掲げ、また3つの新たな対応を講じることで、日本企業の海外事業展開を後押しして参りました。

 3つの基本方針とは、①輸出・投資・融資保険のお客様に対して、コロナ禍関連損失は保険金支払対象とすること、②複雑化するサプライチェーンに絡む保険事故対応として、投資先とは別の国にある部品調達先や販売先がコロナ禍で生産や販売に支障を来した場合のお客様のリスクもカバーすること、③コロナ禍にある世界各国で新規保険引受を継続し、また既存投資案件の投資保険も新たに引き受けること。

 また、3つの新たな対応とは、④海外日系子会社の運転資金調達支援のため、新たに1.5兆円の保険引受枠を設定し、融資保険を提供すること、⑤前払輸入保険によるマスク、手袋、防護服など医療関連物資の輸入支援を行うこと、⑥海外日系子会社が第3国向けに輸出する場合の輸出保険を日系損保からの再保険(フロンティングサービス)という形で引き受けること。

 今回のような経済危機時こそ、公的貿易保険機関として期待される役割を十二分に発揮し、日本企業や国民の皆様に貿易・投資に関する安全網を提供して、安心して海外ビジネスを続けて頂けるよう、今後もこうしたコロナ禍対応業務を全力で遂行してまいります。

 さらに、With/After コロナ時代に向けた新たな取組みとして、日本政府の「インフラシステム海外展開戦略 2025」を踏まえ経済産業省とともに昨年末策定した「LEAD イニシアティブ」に基づく支援を進めてまいります。これは、2050年カーボンニュートラル目標の実現や、デジタル分野における海外展開、海外パートナーとの連携強化、コロナ禍対応を含む社会課題解決や SDGsへの貢献等の、日本企業の先導的な取組みを海外事業資金貸付保険をもって積極的に支援するものです。従来同保険の適用は、日本企業からの出資が要件でしたが、今後はそうした出資がなくても、あるいは日本からの輸出がなくても、上記のような先導的な取組みがあれば同保険の対象とすることといたします。今後これらの分野で1兆円規模の案件形成を目指してまいります。

 ところで、コロナ禍により「ヒト・モノ・カネが国境を越えて自由に流通する“グローバリゼーション”は終焉を迎える」といった声も聞かれます。しかし、国内の市場や資源が限られた我が国にとって、 グローバリゼーションは不可避であり、形を変えて存続すると私は考えています。ただしその際、 効率一辺倒ではなく、もしもの事態に備えた手元在庫や手持資金など「“ゆとり”を持ったグローバル化」が大切になってきます。コロナ禍に加え、近年頻発する自然災害や地政学的リスクの高まりに伴い、企業経営者は経営思想や経営の重点を「効率性(efficiency)」 から「強靱性 (resiliency)」へ、あるいは「Just in time」から「Just in case」へ移していくと思われます。我々NEXI は貿易保険というツールで、日本企業の「Just in case」や「resiliency」を念頭に置いた経営を、そして我が国にとって今後も不可欠なグローバリゼーションを力強くサポートしていきたいと思っております。

 最後に、今年の干支は辛丑(かのとうし)で、「辛さは続くが、一段落すれば徐々に新しい芽吹きがある」という意味があるそうです。一日も早い経済回復を目指し、社員一丸となって日本企業の海外展開を後押しさせていただく所存です。

 今年も日本貿易保険(NEXI)をどうぞよろしくお願い申し上げます。

株式会社日本貿易保険
代表取締役社長 黒田篤郎

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