環境ガイドライン審査役年次活動報告書(2022年度)
1.はじめに
(1) 異議申立手続の概要
株式会社日本貿易保険(以下「日本貿易保険」)は、「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン」及び「貿易保険における原子力プロジェクトにかかる情報公開配慮のための指針」(以下「ガイドライン等」)の遵守を確保するため、世界銀行等の国際金融機関と比しても遜色のない異議申立制度を制定し、2003年10月より施行しました。
異議申立手続は、①日本貿易保険によるガイドライン等の遵守または不遵守にかかる事実を調査し、その結果を社長に報告するとともに、②ガイドライン等の不遵守を理由として生じた日本貿易保険の保険引受案件に関する具体的な環境社会問題にかかる紛争に関して、その迅速な解決のため、当事者の合意に基づき当事者間の対話を促進することを目的としています。
具体的には、プロジェクト実施国の住民から「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン及び貿易保険における原子力プロジェクトにかかる情報公開配慮のための指針異議申立手続等について」(以下「異議申立手続等について」)に基づき、「ガイドライン等が遵守されておらず、現地で被害が生じている」との報告があった場合に、環境ガイドライン審査役が独立・中立的な立場から調査を行います。さらに、関係者間の対話を促進する等の活動により、現地での解決に向けて貢献します。
(2)環境ガイドライン審査役の紹介
環境ガイドライン審査役(以下、「審査役」)の辻昌美氏は、2020年5月に就任され、保険引受プロジェクトのガイドライン等遵守の確認とフォローアップをするとともに、異議申立手続及び審査役としての活動内容の啓蒙普及に努めてきました。
辻昌美氏 プロフィール
【現職】
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(3)年次活動報告書
審査役は、「異議申立手続等について」に基づき年次活動報告書を作成し、毎年度公表いたします。
2.2022年度活動報告等
(1)2022年度異議申立実績等
2022年度は、異議申立の受理はありませんでした。
なお、2022年6月のガイドライン等一部改訂等を踏まえ、翌同年7月に「異議申立手続等について」も一部改訂を行っております。
(2)広報活動
日本貿易保険のホームページにおいて、異議申立手続の概要及び制定経緯について説明するとともに、審査役のプロフィール等を紹介しています。
また、2022年10月、審査役は国際金融機関等の独立アカウンタビリティ・メカニズムにより構成され、米国ニューヨークにて国連開発計画(UNDP)の主催で開催された独立アカウンタビリティ・メカニズム年次会合に出席し、NEXIの異議申立制度の概要等について紹介しました。
(3)第19回独立アカウンタビリティ・メカニズム(IAM)会合への貢献
2022年10月24日~27日に開催された上記会合に出席し、各独立アカウンタビリティ・メカニズムのメンバーと意見交換を行いました。本会合は、“IAM Network会合”と称され、国際金融機関等の独立アカウンタビリティ・メカニズムの責任者が参集して年1回議論を行う場であり、専門家による自由かつ非公式の情報交換ための重要な機会となっております。
今次会合においては、各機関における活動報告に加え、異議申立プロセスの改善やアクセスの向上、手続きの透明性と機密性確保、手続きの事後モニタリングの在り方等について情報共有や意見交換が行われるとともに、異議申立制度の改善に向けた地域コミュニティ組織との協議も実施されました。
審査役は、これらの活動を通じて最新の国際的な動向を把握しつつ、専門的見地から公平・中立の立場に立ち、異議申立制度の適切な運用に努めてまいります。