環境ガイドライン審査役年次活動報告書（2021年度）

　株式会社日本貿易保険（以下、「日本貿易保険」）は、「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン」及び「貿易保険における原子力プロジェクトにかかる情報公開配慮のための指針」（以下、「ガイドライン等」）の遵守を確保するため、世界銀行等の国際金融機関に比べても遜色のない異議申立制度を制定し、2003年10月より施行しました。

　異議申立手続は、①日本貿易保険によるガイドライン等の遵守または不遵守にかかる事実を調査し、その結果を社長に報告するとともに、②ガイドライン等の不遵守を理由として生じた日本貿易保険の保険付保案件に関する具体的な環境社会問題にかかる紛争に関して、その迅速な解決のため、当事者の合意に基づき当事者間の対話を促進することを目的としています。

　具体的には、プロジェクト実施国の住民から「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン及び貿易保険における原子力プロジェクトにかかる情報公開配慮のための指針異議申立手続等について」（以下、「異議申立手続等について」）に基づき、「ガイドライン等が遵守されておらず、現地で被害が生じている」との報告がなされた場合に、環境ガイドライン審査役が独立・中立的な立場から調査を行います。さらに、関係者間の対話を促進する等の活動により、現地での解決に向けて貢献します。

　現環境ガイドライン審査役（以下、「審査役」）の辻昌美明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科特任教授は、2020年５月に就任し、保険付保プロジェクトのガイドライン等遵守の確認とフォローアップをするとともに、審査役の存在と活動内容の啓蒙普及に努めてきました。

　審査役は、「異議申立手続等について」に基づき年次活動報告書を作成し、公表いたします。

　2021年度は、前年度に引き続き、異議申立の受理はありませんでした。

　日本貿易保険のホームページにおいて、異議申立手続の概要及び制定経緯について説明するとともに、審査役のプロフィール等を紹介しています。

　また、2021年９月、審査役はオンラインで開催された国際金融機関等の異議申立機関による第18回独立アカウンタビリティ・メカニズム会合に出席し、NEXIの異議申立制度の概要や運用状況について紹介しました。

　2021年９月27日～30日にオンラインで開催された上記会合に出席し、各異議申立機関のメンバーとの意見交換を行いました。本会合は、“IAM Network会合”と称され、国際金融機関等の独立した異議申立機関の責任者等が集合して年１回議論を行う場で、専門家による非公式で自由な情報交換のための機会となっております。今次会合においては、各機関における異議申立の受理の状況に加え、新型コロナウイルス感染症拡大下での業務遂行上の課題、具体的な現地での対話を通じた解決策等について情報共有や意見交換が行われるとともに、異議申立制度の改善に向けた地域コミュニティ組織との協議も実施されました。
　審査役は、これらの活動を通じて国際的な動向を把握しつつ、専門的見地から公平・中立の立場に立ち、異議申立制度の適切な運用に努めてまいります。