保険事故事例
貿易一般保険

1.仕向国の高関税措置の発動による船積不能事故

 A国の政府が、日本政府が発動したセーフガード暫定措置に対抗して、日本製自動車、携帯電話及び空調機に対し、100%の特別関税を課しました(以下「特別関税措置」といいます)。これにより、バイヤーから発注済みの貨物の輸出中断要請があり、貨物の輸出を停止しました。特別関税措置の発動から約半年後に同措置は撤廃されましたが、輸出者(被保険者)は損失を最小限にする手段として、当初の契約相手方に貨物の引渡しを行うこととしてバイヤーと交渉を行いました。その結果、当初の価格から値引きをすることで交渉がまとまり出荷にこぎつけました。

 しかしながら、値引き差損、及び再出荷までに要したコスト(出張旅費、倉庫保管料、梱包費用等)を負担せざるを得なくなりました。この輸出者(被保険者)の損失が、貿易一般保険約款第3条第7号「本邦外において生じた事由であって、輸出契約等の当事者の責めに帰することができないもの」に該当することから、約9億円の保険金をお支払いいたしました。

仕向国の高関税措置の発動による船積不能事故

2.支払人の資金繰り悪化に伴う代金回収不能事故

 輸出者(被保険者)がB国の電機機器販売会社(バイヤー)とAV機器の輸出契約を締結して、貨物を輸出しました。しかし、B国の金融危機に伴う兌換法の廃止、外貨建債権の現地通貨化などの措置により、決済期限になってもバイヤーからの外貨送金が行われませんでした。輸出者(被保険者)は、支払督促をしましたが、通貨下落によってドル換算ベースでの収入減によりバイヤーの資金繰りが悪化し、結局、決済期日から3カ月を経過しても入金されず、保険事故が確定して、貿易一般保険約款第3条第12号「輸出契約の相手方の3月以上の債務の履行遅滞」に該当することから、未払いの決済代金に関して約6億円の保険金をお支払いいたしました。

支払人の資金繰り悪化に伴う代金回収不能事故

3.支払人の資金繰悪化(債務履行遅滞後破産)による代金回収不能事故

 輸出者(被保険者)がC国の自動車販売会社と自動車の輸出契約を締結して、貨物を輸出しました。しかし、C国の経済破綻により景気が悪化し、自動車の販売も急激に減少して、自動車販売会社(支払人)は経営不振に陥って、決済期日に輸出貨物代金の支払いがなされませんでした。その後、支払人は裁判所に破産を申請しました。

 支払人の破産は保険金支払の(てん補事由の)対象となりますが、代金回収不能事故の場合、てん補(事故)事由は決済期日より前に存在しなければならず、本件の場合、決済期日到来時点では支払人はまだ破産していないので、てん補事由は貿易一般保険約款第3条第12号「輸出契約の相手方の6月以上の債務の履行遅滞※」となります。

 これにより、未払いの決済代金に関して約1億円の保険金をお支払いいたしました。

※現在の約款は「3月以上の債務の履行遅滞」ですが、平成13年3月31日以前に保険契約を締結した案件のため、旧約款が適用された案件です。

支払人の資金繰悪化(債務履行遅滞後破産)による代金回収不能事故

4.Over-Due発生後に船積みした貨物の代金回収不能事故

注)Over-Dueとは、既に満期不払いが生じている状態をいいます。

 輸出者(被保険者)がD国の製紙メーカーと製紙製造プラントの輸出契約を締結して、貨物(プラント資機材)を数回に分けて輸出することとなり、支払人の資金繰りの悪化による債務不履行後、いわゆるOver-Due発生後においても貨物の船積みを行いました。

 その後、支払人の財務状況は改善されず、代金が支払われなかったため、貿易一般保険約款第3条第12号「輸出契約の相手方の6月以上の債務の履行遅滞※」に該当することから、未払いの決済代金に関して約1億円の保険金をお支払いいたしました。

※現在の約款は「3月以上の債務の履行遅滞」ですが、平成13年3月31日以前に保険契約を締結した案件のため、旧約款が適用された案件です。

※一般的には、Over-Due発生後の船積みは中止すべきであり、Over-Due発生後の船積みが行われて保険事故(債務の履行遅滞)が発生した場合、被保険者の故意又は重大な過失が問われて、約款の規定により保険金は支払われないこととなりますが、Over-Due発生後の船積みがやむを得ない事情に基づく、合理的な措置であったと判断できる場合は保険金をお支払いすることとしています。
 本件については、貨物はバイヤー(支払人)用に専用設計された貨物であり、第三者への転売の可能性は極めて低く、また、最終船積みの貨物が輸出されないと最終的にプラントが完成できず、更に支払人の経営状況が悪化して、既に船積みした貨物代金の回収も極めて困難になることから、船積みを継続することが、保険契約の有無にかかわらず、輸出者(債権者)として当然採るであろうと考えられる行動であり、経済合理性に適ったやむを得ない合理的な措置であったと認定して、被保険者に「故意又は重大な過失」は存在しなかったと判断し、保険金をお支払いいたしました。このような場合は、ケースバイケースで判断されることになりますので、原則として事前に日本貿易保険(NEXI)にご相談いただくようにお願いします。

Over-Due発生後に船積みした貨物の代金回収不能事故

5.ストライキ発生に伴う増加費用事故

 E国において港湾労使の労働協定交渉が難航し、港湾労組はターミナルでスローダウン(怠業)を開始しました。これに対し使用者団体は対抗措置として港湾施設のロックアウトを実施しました。これにより港湾荷役機能が停止したため、貨物を積載した船舶が滞船し、滞船料が発生しました。輸出者(被保険者)は、輸入者経由で最終需要者に滞船料の負担を要請しましたが、支払いを拒絶されたため、輸出者(被保険者)が滞船料の負担をすることとなり、貿易一般保険約款第3条第5号「本邦外において生じた事由による仕向国への輸送の途絶」に該当することから、当該滞船料(増加費用)に関して約1千万円の保険金をお支払いいたしました。

ストライキ発生に伴う増加費用事故